「フリーランスが正社員を超える日が来るのか?」
フリーランスとして働く人が増え、個人の力で稼ぐことが当たり前となりつつある昨今。企業に属する正社員の価値は下がる一方なのか?そうした問いを抱えながらも、多くの企業が正社員に対する期待を変えることなく、組織運営を続けている。


私はフリーランスとして活動していた時期があるが、その経験を経て、正社員の価値を改めて考えるようになった。そして今、マーケティング支援という立場から正社員の存在意義について整理したいと思う。


フリーランスの自由と正社員の安定の間で

フリーランスの自由は本当の自由か?

フリーランスには一見すると羨ましく映る自由がある。働く場所も時間も、自分の意思で決められる。誰と仕事をするかを選べる点も魅力だろう。しかし、その自由には「責任」という代償が伴う。
まず、自分を「選んでもらう」ためには、スキルの向上やネットワーク作り、そして常に最新のトレンドを追う努力が欠かせない。さらに、成果が直接収入に直結するため、プロジェクトの完遂に向けた緊張感も途切れることはない。
自由には制約がある。この事実を忘れた時、フリーランスは思わぬ孤独や不安に直面することになるのだ。


正社員の「安心」はどう生まれるのか

正社員には、フリーランスにはない「安心」があると言われる。毎月決まった給与が保証され、福利厚生も充実していることがその理由だ。しかし、本当にそれだけだろうか?
企業には、個人では得られないリソースがある。たとえば、過去の事例から積み上げられた知識や、部署間の連携による情報共有、業界全体に広がるネットワークなどだ。これらは、正社員として組織に属しているからこそ利用できる貴重な資産である。
その一方で、この「安心感」は自己成長の努力を怠った瞬間、逆に足かせとなる可能性もある。会社に依存しすぎるリスクを避けるためにも、正社員としての「安心」をいかに活用するかが問われるのだ。


正社員の「リスク」とは何か

正社員のリスクとして挙げられるのは、何よりも「変化への対応力を失うこと」だ。企業の枠に守られることで、自分の市場価値を磨く必要性を感じなくなり、気づけば時代遅れのスキルセットに縛られているケースも少なくない。
特に近年、リモートワークやDX推進などの影響で、業務の在り方そのものが変化している。こうした変化に対応できない正社員は、組織の中での価値を失う可能性もある。
それでも、正社員には企業内での役割を通じて自己成長を目指すチャンスが常にある。リスクを回避するためには、この「役割」をいかに活用するかが鍵となる。


フリーランスと正社員の境界線は曖昧になっている

副業が許可される企業が増えたことで、正社員でありながらフリーランス的な働き方を実践する人が増えている。逆に、フリーランスが特定の企業と長期契約を結び、ほぼ正社員のような立ち位置で仕事をするケースも珍しくない。
例えば、私はかつてフリーランスとして活動していたが、企業からの要望によって週に数日間オフィスに通い、社員と共にプロジェクトを進めることも多かった。このような状況下では、「正社員」と「フリーランス」という二分法自体が無意味に思えることもある。


正社員の価値を再定義する

チームの一員としての価値

正社員が持つ最大の強みは、企業における「チームプレー」だ。個人プレーが中心のフリーランスとは異なり、正社員は組織の目標に向けてチームで動くことが求められる。
例えば、新商品の開発やマーケティング戦略の立案では、部署を越えたコラボレーションが必要不可欠だ。この際、正社員としての経験やネットワークは極めて有効に機能する。フリーランスが個々の力で挑むのに対し、正社員はチーム全体の力で成果を目指す。この違いは非常に大きい。


フリーランスと正社員の相互補完

現代の企業は、フリーランスのスキルや視点を積極的に取り入れることで競争力を高めている。一方で、フリーランスも正社員が提供する安定したプロジェクトリソースや、企業特有のノウハウを活用して成果を上げている。
このように、フリーランスと正社員は対立する存在ではなく、むしろ互いに補完し合う関係だ。未来の働き方は、こうした相互補完によって成り立つだろう。


フリーランス経験が正社員の価値を高める

私自身、フリーランスとしての経験が正社員としての価値を高めると確信している。フリーランス時代に培った「自律性」「責任感」、そして「自己解決力」は、正社員としての役割を全うする上で極めて重要だ。
例えば、プロジェクトマネジメントにおいて、フリーランス的な視点で「効率」や「成果」を追求する姿勢は、チーム全体のパフォーマンスを向上させる一助となる。


未来の働き方は選択肢の多様性にある

どちらが正解かではなく、どちらを選ぶかが重要な時代に突入している。自分のスキルや価値観に合った働き方を選び、時にその選択を変える柔軟性こそが、現代の働き方における最も大切なスキルだろう。


「正社員の価値」とは「変化に対応する力」にある

フリーランス時代を経て感じたのは、正社員には「組織の力を活用しながら個人として成長する」という価値があることだ。そして、その価値を最大化するためには、企業側も従業員一人ひとりが自分の強みを活かせる環境を整える必要がある。
「正社員」や「フリーランス」という区分けにとらわれず、働き方の多様性を認める社会こそが、次の時代を切り開く鍵となるのではないだろうか。